糖質制限ダイエットのメリット・デメリット 正しいアプローチで健康的に痩せる
糖質制限ダイエットが流行しはじめたのは2012年頃です。それから10年以上経った現在、糖質制限は一般的な言葉として定着したといってもよいでしょう。いまやダイエットといえば「糖質を制限することが当たり前」と考える人も多いはずです。今回は糖質制限ダイエットについて、メリット・デメリットと注意点を詳しく解説します。
目次
Toggle糖質制限ダイエットとは
「糖質制限ダイエット」という言葉はよく聞くようになりましたが、具体的にどういうダイエット法なのでしょうか。
糖質とは
糖質制限ダイエットを理解するには、まず「糖質」について学ぶ必要があります。糖質とは炭水化物に含まれる栄養素で、私たちの体のエネルギー源となる重要なものです。炭水化物は、タンパク質、脂質と並ぶ3大栄養素のひとつで、炭水化物はさらに糖質と食物繊維からなっています。
食事におけるタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)のバランスをPFCバランスと呼びますが、炭水化物中の糖質を制限するような食事をとるダイエット方法が糖質制限ダイエットです。理想的なPFCバランスとして、タンパク質15%前後、脂質25%前後、残り60%程度を炭水化物にすることが推奨されています。しかし、糖質制限ダイエットではタンパク質と脂質の摂取量を増やし、糖質(炭水化物)を20~40%まで落とします。
従来はダイエット方法の主流といえば「カロリー制限ダイエット」でしたが、糖質が少ない食品を選ぶだけの手軽さや短期間でも減量しやすいことから、近年では糖質制限ダイエットを支持する人が多くなっています。
もともとは糖尿病の食事療法だった
もともと糖質制限は、1970年代のアメリカで始められた糖尿病患者のための食事療法です。ロバート・アトキンス医師が提唱し、「アトキンス式低炭水化物ダイエット」という書籍も出版されています。
ごはんやパン、麺類などの炭水化物が多く含まれる食品を食べると、血液中の糖質が増加します。このとき、細胞に糖質が取り込まれるよう促すのが、すい臓から分泌されるインスリンです。糖尿病になるとインスリンの働きが弱くなり、糖質が血液中に残りやすくなります。糖質が血管内にとどまると細胞を傷つけるリスクが高まって、動脈硬化や失明といった合併症を引き起こします。
食事の糖質量そのものを減らす糖質制限食は、糖尿病患者の血液中の急激な増加を防ぐだけでなく、インスリンの働きが弱くなっていても血液中に糖質が残りにくくなるため効果的です。ただし、自己流でおこなうと筋肉の減少や体力の低下といった不調を招くこともあるため、専門家の指導に従うことをおすすめします。
糖質制限ダイエットは、糖尿病患者でない一般人のダイエット手法として応用されたもので、健康や美容を目的とした減量・ボディメイクのために転用されたものです。
一大ムーブメントに
糖質制限ダイエットの方法を大ざっぱにいえば、ごはんやパン、麺類などを控えるというだけのシンプルなものです。通常はカロリー計算のような面倒なことをしなくてもよいですし、完全に糖質を断つような厳格さは求められません。そういった手軽さの割には結果が出やすいため、爆発的に広まりました。テレビCMによる宣伝や低糖質ブランドの展開などもあり、「ダイエットといえば糖質制限」というほどのブームになっています。
また、コロナ禍におけるダイエット意識の高まりや、インターネットやSNSを通じて糖質制限に関する情報を得やすかったということも、一大ムーブメントとなった要因といえるでしょう。
糖質制限で痩せるメカニズム
それほど厳しいルールでおこなわなくても、糖質制限ダイエットで減量しやすいのはなぜでしょうか。ここでは、糖質制限で痩せるメカニズムを解説します。
糖質(ブドウ糖)は身体のエネルギー源
「糖質を制限すれば痩せる」のはなぜかというと、「糖質をとり過ぎれば太る」からです。炭水化物のうち、糖質は小腸でブドウ糖(グルコース)に分解されて血管に取り込まれ、全身の細胞へ運ばれます。血液中のブドウ糖濃度、すなわち血糖値が上昇すると、すい臓から分泌されるインスリンの働きによって細胞に取り込まれます。
細胞に取り込まれたブドウ糖はエネルギー源として利用されますが、取り込まれずに残ったブドウ糖はグリコーゲンに変換されて肝臓や筋肉に蓄えられていく仕組みです。とはいえ、グリコーゲンとして貯蔵できる量には限度があり、それを超えた糖質は体脂肪となって蓄えられます。こういったメカニズムにより、糖質を食べ過ぎると太ってしまうわけです。
血液中の糖質過剰を防ぐには、たくさん運動してエネルギーとして消費するか、筋肉量を増やして基礎代謝を上げるか、糖質を制限するかのいずれかを選択するしかありません。これらの方法のうち、糖質制限は時間と労力をかけずに高い減量効果を得ることができます。
ケトーシスという反応
「ケトーシス」とは、体内のケトン体が増えた状態を表す言葉です。ケトン体は脂肪の合成や分解における中間代謝産物で、ブドウ糖の代わりに細胞のエネルギー源となります。通常は血液中にケトン体はほとんど存在しません。糖質が減少しても、肝臓などに蓄えられているグリコーゲンの分解が起こって血糖値を維持しようとするためです。しかし、肝臓のグリコーゲンが枯渇し、その後も糖質が不足した状態が続けば筋肉や脂肪がエネルギー源として分解されていきます。脂肪が分解される過程でケトン体が生成されるので、体内でケトーシスという反応(=ケトン体が増えること)が起こっていれば脂肪が減少しつつあるということです。
糖質制限ダイエットをおこなうと血液中の糖質が少なくなります。血糖値が下がるとグリコーゲンの分解が先に起きますが、肝臓に蓄えられている分は18〜24時間程度で枯渇するため、その後も糖質の摂取を抑えることでケトン体が働きやすくなって脂肪が落ちるのです。
栄養を調整しながら継続的に糖質を制限して意図的にケトーシスの体にする方法を、特に「ケトジェニックダイエット」と呼びます。ケトジェニックダイエットに成功すれば脂肪をエネルギー源とする状態を得られますが、難易度も高いです。失敗すると健康を害する恐れもあるため、安易に取り組まないほうが無難です。
糖質制限ダイエットのメリット
これまで糖質制限が支持を得てきたのは、ほかのダイエット方法よりも優れたメリットがあるためです。ここでは、糖質制限ダイエットにおける3つのメリットを説明します。
効果が早く現れる
カロリー制限ダイエットと比べると、糖質制限ダイエットは短期間で減量の効果が出やすいです。糖質を制限すると肝臓や筋肉に蓄えられているグリコーゲンが減少します。そのときグリコーゲンと結びついている水分も失われるため、体重が早く落ちるわけです。特に糖質制限をスタートしてから最初の1〜2週間で多くの水分が抜けます。始めて比較的すぐに結果が出ることから「ダイエット効果が早く現れる」という印象を持っている人が多いです。体重減少は数値的にもわかりやすい指標で、ダイエットを続けるモチベーションも高まります。
また、水分が抜けることで見た目の変化も早く起こります。部分的あるいは全体的にむくみがとれて、顔がスッキリしたり、胴回りがスリムになったりするためです。二の腕や太ももなどの気になる場所が一回り細くなる人もいます。「結婚式で美しくドレスを着たい」「もうすぐ夏だから少しでもスリムになっておきたい」というように、短期間で効果を得たい場合には糖質制限ダイエットが向いているといえます。運動も取り入れた本格的なボディメイクを始める前にも、糖質制限で少し体を軽くしておくと後々のトレーニングが楽になります。
空腹感を感じづらい
糖質を抑えることができていれば、食事の自由度が高いのも糖質制限ダイエットの利点です。ごはんやパンなどの主食を減らす場合には、タンパク質の多いおかずを1品増やすなどして満足感を高められます。肉や魚、卵には糖質がほどんど含まれないため、少し多めに食べてしまっても影響は少ないでしょう。もしくはキャベツやレタスなどの葉物野菜を中心にしたサラダを多めに食べることも有効です。糖質制限ダイエットでは脂質をとっても問題ないため、腹持ちのよいメニューにすることができます。
しかし、糖質はエネルギー源であるため、あまり主食を減らすと元気が出ないという体質の人がいるかもしれません。そのような場合でも、糖質制限ダイエットには工夫の余地があります。甘みのあるタレやソースを避けて塩や醤油の味付けにしたり、間食では甘いものの代わりに高カカオチョコレートやナッツを食べたりすることで、トータルの糖質量を減らすことができます。ほかのダイエット方法に比べても精神的・身体的な負担が少ないため、それほど空腹感にも悩まされずに取り組めるはずです。
面倒なカロリー計算が不要
糖質制限ダイエットが脚光を浴びているとはいえ、カロリー制限ダイエットの有効性が失われたわけではありません。医療現場やプロアスリートの世界では、現在でも栄養管理とカロリー計算が重視されています。
しかし、一般の人がダイエットをする際には、カロリー制限ダイエットだと続かない可能性が高いでしょう。これは単純に、食事のたびにカロリー計算をするのが面倒だからです。それに対して、糖質制限ダイエットはカロリー計算をしなくても、糖質を控えるだけで一定の効果が期待できるという手軽さがあります。手軽であれば続けやすく、好結果にもつながります。
ただし、食品・食材ごとの糖質量をある程度は把握しておくことが大切です。主食の量を抑えるだけでは有効な糖質制限になっていないケースもありえます。特に気をつけたいのは、いも類や根菜類、くだものなど、ヘルシーに見えて糖質が高めの食材です。調理方法や味付けによっても糖質が変わります。健康志向の和食であっても、砂糖やみりんを多く使っている料理だと糖質制限ダイエットには向きません。
糖質制限ダイエットの注意点
糖質制限ダイエットは早く効果が得られる一方で、気をつけておくべき点もいくつかあります。ここでは、糖質制限ダイエットの注意点を説明します。
体調不良を感じる
糖質制限を始めたときには、低血糖による体調不良に陥りやすいです。血糖値が下がると、頭痛やめまい、倦怠感、眠気などを引き起こします。車の運転をする人は思わぬ事故を避けるためにも、厳しい糖質制限をおこなわないように注意しましょう。ケトジェニックダイエットを目指している人はケトーシス(身体のエネルギー源が糖質からケトン体に切り替わる状態)になるまで、数日から数週間かかることに留意する必要があります。ケトーシスになるまでの間は、低血糖状態になりやすいです。
低血糖になるとアドレナリンの分泌が増えて興奮状態になったり、ブドウ糖が不足することで脳に悪影響を与えたりすることがあります。イライラする、気分が落ち込む、思考がまとまらない、といった不安定な精神状態を引き起こして元気をなくしてしまう人もいます。このようなときには、いったん糖質制限を中断して様子を見ましょう。
また、糖質制限ダイエット中に便秘になってしまう人がいるかもしれません。糖質を抑えようとすると自然と炭水化物の摂取量が減りますが、同時に食物繊維も足りなくなる恐れがあるためです。食物繊維は腸内環境を整えて便の量も増やすのに役立ちます。不足して便秘になってしまわないように注意してください。
筋肉が減ってしまうことがある
糖質を過度に制限すると「糖新生」という反応を起こすことがあります。糖新生とは筋肉中のアミノ酸を分解して不足している糖を作り出すことです。もし糖新生によって体重が減ったのであれば、「痩せた」「体重が落ちた」と単純には喜べません。糖新生によって筋肉が分解されると、それだけ基礎代謝が落ちて痩せにくい体になってしまうからです。
糖質制限ダイエットで筋肉を落とさないようにするためには、タンパク質を意識的に摂取しましょう。タンパク質は筋肉をつくる栄養素であるため、筋肉量が低下するのを防ぎます。さらに筋力トレーニングも並行しておこなうのがおすすめです。
長期的に取り組むのは難しい
糖質制限ダイエットは短期的には効果が出やすいのですが、長期的に取り組むのは難しいダイエット方法であるといわれています。長期間にわたり糖質制限をしていると、インスリン感受性が鈍くなって、筋肉量の減少や代謝の低下、耐糖機能の衰退を引き起こす可能性があるためです。また、減量効果を早めに経験してしまうことで、後の停滞期を非常に辛く感じるかもしれません。糖質制限をあきらめて急に食事を元に戻すのも身体によくないですが、明確な結果を出そうと無理な糖質制限に走るのはさらに危険です。
ダイエット効果が出る出ないにかかわらず、長期間にわたって糖質が多い食事ができないのをストレスに感じる人もいるでしょう。「白米が好き」「ラーメンが好き」「お好み焼きが好き」という人は、チートデイ(好きなもの自由に食べてもよい日)を上手に取り入れるなどする必要があります。
リバウンドの可能性が高い
比較的ハードな糖質制限ダイエットをしていた人が中止してダイエット前と同程度の糖質をとるようになると、リバウンドをしてしまう可能性が非常に高いです。ケトーシスからブドウ糖をエネルギー源とする回路に戻り、大量の糖質とともに水分も溜め込むからです。
糖質制限中に甘いものを意識して避けてきた人は、止めた後の反動に特に注意しましょう。むしろ反動が起こることを見越して、糖質制限ダイエット中にもスイーツなどを少しは食べられるように調整するのが望ましいです。我慢し過ぎればかえって過食を招くため、完璧を目指さない「ゆるめの糖質制限」のほうがよいでしょう。
長期的に取り組む場合と同様に、リバウンドを防ぐにはチートデイを設けるのも効果的です。週に1回程度、好きな物を食べられる日を設定すればストレスを溜めずにすみます。どんなダイエットをする場合でも、止めた後のリバウンド対策を考えておかなければなりません。
まとめ 糖質は「悪者」ではない
糖質制限ダイエットは手軽に始められ、効果も早く現れることから世代を問わず流行しています。しかし、過度なやり方や間違った方法でおこなうと逆効果になる場合もあります。そもそも糖質は悪者ではなく、3大栄養素のひとつに数えられるほど重要なものです。PFCバランスを意識しながら摂取カロリーを抑えるのに有効な手段と捉えて、ゆるやかな糖質制限に取り組みましょう。
糖質制限をすると同時に、運動によってエネルギー消費を図るのも極めて重要なことです。筋肉量を維持・増強して代謝を高めることがダイエット成功の近道といっても過言ではありません。スポーツジムに通って、楽しみながら運動習慣を身につけてみませんか。
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