肩こり・首コリに効く!こわばった僧帽筋をほぐすストレッチを紹介
肩こりや首コリがひどくて「首が回らない」「腕が上がらない」といった悩みは、中高年だけでなく若い世代にも共通しています。その多くは、長時間のスマートフォン・ゲーム機の使用やパソコン作業などで肩甲骨周りの筋肉である「僧帽筋」がこわばってしまうことが原因です。肩こりや首のコリを手軽に解消したいのなら、僧帽筋をほぐすストレッチが有効です。今回は、僧帽筋や肩こりに関する基礎知識を解説した上で、おすすめの僧帽筋ストレッチを紹介します。
目次
Toggle僧帽筋とは
僧帽筋は首から背中にかけて平たく伸びる大きな筋肉です。表層にある三角形状の筋肉で、上部・中部・下部に分かれています。肩こりが気になるときに、よくマッサージをおこなう首と肩の境目あたりが上部僧帽筋です。そこから肩甲骨に沿って、中部僧帽筋、下部僧帽筋へとつながっています。僧帽筋上部は肩甲骨を上げたり下げたりする動き、僧帽筋中部は後ろに下げる動きを担当する筋肉です。僧帽筋下部は肩甲骨を後ろ、または下向きに動かします。
それぞれ筋繊維の走る方向が異なり、上部僧帽筋は斜め下方向、中部僧帽筋は水平方向、下部僧帽筋は斜め上方向です。ストレッチをおこなうときには筋繊維の走る方向を意識すると効果が高まります。僧帽筋のトリガーポイントは筋肉全体に位置し、急性・慢性どちらの肩こりも発生しやすくなります。トリガーポイントとは「痛みの引き金となる痛覚過敏部位」のことで、骨や他の筋肉と連結する部位、または腱に移行する部分に多くあります。
僧帽筋と肩こり
肩こりに悩まされている人は多いですが、僧帽筋との関連性を理解している人は少ないかもしれません。ここでは、まず肩こりについて詳しく解説し、その原因が僧帽筋の痛みであることを説明します。
肩こり
肩こりは日常的によく起こる症状です。デスクワークが中心となった現代人に多いともいわれています。一般的に肩こりは、首すじ・首のつけ根から肩・背中にかけて「張った」「こった」「痛みがある」といった症状を指しますが、正式な病名ではありません。軽症なら肩に違和感がある程度ですが、ひどいケースでは頭痛や吐き気をともなうこともあります。肩の筋肉がこわばって血行不良をおこし、疲労や痛みの元になる物質がたまって神経を刺激することが肩こりの原因と考えられています。
2021年11月から12月に全国10万人(男女各5万人)を対象とした一般社団法人日本リカバリー協会の調査によれば、肩こりや首コリを抱えている人の割合は72.5%でした。特に30〜40代は75.3%と最も高く、ほぼ4人中3人となる計算です。男性(67.0%)に比べて女性(78.1%)のほうが、また60代(65.9%)よりも20代(73.5%)のほうが肩こりに悩む人が多いという結果になっています。肩こりは日本人にとって国民病のひとつといえるでしょう。
出典:PRTimes 全国10万人の調査より、“首筋・肩こり”は疲労の要因に過去5年の肩こり事情、2021年が最多の72.5%首筋・肩こり県民1位「岩手県」、ゲームの時間はそのまま肩こり時間に
肩こりの原因は僧帽筋の痛み
肩こりの原因は、僧帽筋のトリガーポイントに痛みが発生することです。上部・中部・下部いずれにもトリガーポイントがあります。特に上部僧帽筋にあるトリガーポイントは典型的な肩こりの原因です。例えば頭を回したときに首や肩に痛みが出たり緊張型の頭痛を引き起こしたりします。
中部僧帽筋のトリガーポイントは肩甲骨周辺に痛みを感じさせ、筋力低下にも関与します。猫背や上腕の自律神経症状があるなら、中部僧帽筋の痛みをとると改善されるかもしれません。また、下部僧帽筋のトリガーポイントは肩上部や後頭骨底部に痛みを生じさせ、首コリの原因にもなります。
トリガーポイントに痛みが発生するのは、首や背中が緊張するような姿勢で作業をしたり前かがみの姿勢や猫背を長時間続けたり、あるいはスポーツなどで酷使したりして僧帽筋に大きな負荷がかかったときです。このとき僧帽筋上部または中部、下部に緊張・損傷・炎症が起きて痛みを感じます。
僧帽筋への物理的な負担以外には、運動不足や血行不良、体の冷え、精神的なストレスなどが原因です。そもそも日本人は頭の大きさに対して首や肩の骨格や筋肉が弱いため、体のつくり的にも肩こりになりやすいといわれています。ただし僧帽筋の痛み以外にも、頚椎疾患や頭蓋内疾患、高血圧症、眼疾患などが肩こりの原因となっている場合もあります。
僧帽筋が緊張することで生じる肩こり以外の症状
大きい筋肉である僧帽筋は筋緊張や圧痛、炎症がひどくなると、肩こり以外にも首コリや背中の張り、こわばりなどが引き起こされます。さらに関連痛やしびれ、感覚鈍麻、発汗などの自律神経症状にもつながります。例えば頭痛や吐き気は、ひどい肩こりのときに現れる典型的な症状です。
さらに、僧帽筋の緊張によって胸鎖乳突筋(首の前側の筋肉)にも緊張が起こります。胸鎖乳突筋の緊張によって脳に平衡感覚障害が生じ、めまい・ふらつきを感じることがあります。耳の中のアブミ骨筋や鼓膜張筋に影響を与えて、耳鳴りや難聴を引き起こすことにも注意が必要です。
僧帽筋の緊張から肩こりになってしまうと、その肩こりによって僧帽筋の柔軟性が失われたり筋力が低下したりすることもあります。結果として、姿勢が悪くなったり他の部位に負担がかかったりするかもしれません。そうなると、また別のトラブルを引き起こすことになるでしょう。僧帽筋のトリガーポイントは胃や肝臓、胆のうと関連しているため、これらの臓器の働きが悪くなる可能性もあります。
僧帽筋が緊張する原因
僧帽筋が緊張する代表的な原因は「姿勢の悪さ」「運動不足」「ストレス」「冷え」です。ここでは、それぞれの原因を詳しく説明します。
姿勢の悪さ
僧帽筋が緊張する最大の原因は姿勢が悪いことです。特に良くないのが「猫背」と「巻き肩」で、デスクワークをしているときやスマートフォンに熱中しているときなどになりやすい姿勢といえます。猫背は頭と腕が体の中心より前方にずれ、巻き肩は肩が胸より前に出ることから、背中が丸まって肩甲骨が広がります。そして首や肩に負担がかかり、僧帽筋に疲労がたまって緊張状態になってしまうのです。
また、悪い姿勢を長時間続けたり繰り返したりすると血管が圧迫されるため、血液の流れにも影響が出ます。血流が悪くなれば筋肉への酸素や栄養の供給が滞り、体温も下がって筋肉が冷えて硬くなります。老廃物もうまく排出されず、ますます僧帽筋が不健康な状態に。背筋を伸ばして胸を張り、正しい姿勢になるよう心がければ、僧帽筋の緊張をほぐしたり血流を改善したりすることができます。
運動不足
運動不足もまた僧帽筋の緊張を引き起こします。運動をしないことで筋力の低下や血流が悪化し、僧帽筋への緊張へつながります。頭部や肩、腕の重さは主に僧帽筋で支えられていますが、筋力が弱まれば重さを支えるのに無理が生じ、僧帽筋の緊張につながります。特にコロナ禍では外出自粛のために運動量が落ちてしまい、肩こりを始めとした体調不良が増えたと感じる方もいるでしょう。リモートワーク・在宅ワークで働く人は、肩こり予防として意識的に体を動かすことが必要です。
運動不足から血流が悪くなってしまうと、姿勢が悪いときと同様に首と肩周辺の血のめぐりも悪くなり、僧帽筋が冷えたり硬くなったりします。全身をバランスよく使う運動、例えばウォーキングやランニング、水泳、ラジオ体操などを日常的におこなって血流を改善させましょう。筋力を高めるには強めの負荷を掛ける必要がありますが、血流を良くすることが目的なら筋肉を動かすだけで十分です。
ストレス
僧帽筋を緊張させる要因には精神的ストレスもあります。ストレスとは、外部刺激によって発生する緊張状態のことです。ストレスをもたらす外部刺激には以下の4つがあります。
環境的要因:天気や気温、湿度、気圧、騒音など
身体的要因:病気や体調不良、睡眠不足など
心理的要因:悩み事や心配事、不安など
社会的要因:仕事や学校、人間関係など
ストレスは交感神経を興奮させ、筋肉の緊張や血流の悪化を引き起こします。緊張したときに思わず肩に力が入ってしまうように、僧帽筋への影響は少なくありません。長期的にストレスがかかる生活を送っていると、僧帽筋の緊張が解けずに肩こりが深刻化してしまいます。
ストレスはネガティブなことだけではなく、進学や就職、結婚、出産といったポジティブな刺激でも起こりえますし、転職や引っ越しのような生活の変化からもストレスを感じる場合があります。原因不明の肩こりに悩まされている人は、自分に何らかのストレスがかかっていないかチェックしてみましょう。
冷え
首周り・肩周りが冷えると血流が悪化し僧帽筋が緊張してしまいます。冬になって寒くなると肩こりがつらいという人は多いはずです。気温の低下によって直接的に血の流れが悪くなるのはもちろんですが、寒くて体がこわばると筋肉の緊張も起こります。体を丸めたり肩をすくめたりすることで姿勢も悪くなってしまうでしょう。冷えは、前述した姿勢の悪さや運動不足、ストレスすべてにつながる要因ともいえます。
まず、首周りと肩周りを冷やさないように、マフラーやネックウォーマー、ストールなどで保温することが大切です。さらに手首や足首、腕、腰なども温めると、より効果が高まります。肩だけでなく全身の血行を良くするのが僧帽筋の冷えを抑えるコツです。ただし、厚着をしすぎて首や肩の動きが制限されると、かえって肩こりになってしまうので注意しましょう。
おすすめの僧帽筋ストレッチ
僧帽筋と肩こりの関係や、僧帽筋が緊張する原因を踏まえた上で、筋肉をほぐすのに有効なストレッチを紹介します。自宅で簡単にできるので、肩こりや首コリに悩んでいる人におすすめです。
首横のストレッチ
僧帽筋を伸ばして緊張をほぐす方法として、首を左右に傾けるストレッチがあります。手軽に首と肩の疲労を軽減できるので、仕事の休憩時間などにやるのがおすすめです。
1. 右手を頭の上に置きます。
2. 足を肩幅くらいに広げて立ち、首を右に傾けます。頭の上に置いた手で引っ張るというより、手の重さで首が自然に傾くような意識でやるとよいでしょう。
3. 反対側の左腕は下に伸ばします。首の左側と左肩が伸びて心地よい刺激がある状態で15秒ほど維持します。痛みを感じると逆に筋肉を緊張させるので、無理に伸ばさないようにしてください。
4. 左右反対にして、交互に何度かおこないます。僧帽筋の緊張がほぐれてきたら、維持する時間を少しずつ伸ばしていくのも効果的です。
首前後のストレッチ
首を縦方向に伸ばすストレッチです。首横のストレッチとセットでおこなうと、僧帽筋を十分にほぐすことができます。
1. 足を肩幅くらいに広げて立ち、両手を頭の後ろに添えます。
2. 両手の重さを感じながら、ゆっくりと首を前に傾けます。息を吐きながら上半身の力を抜くようにすると、無理なく僧帽筋を伸ばせるでしょう。首を傾けた状態でそのまま15秒キープします。
3. 両手を頭に添えたまま、元に戻します。
4. 今度はあごを上げるようにしながら、首を後ろに倒します。同じく倒した状態で15秒キープしたあと、元に戻します。これを何度か繰り返しますが、一つひとつの動作をゆっくりとやるのが大切です。
ストレッチ用のポール を使ったストレッチ
ストレッチ用のポールはトレーニングやエクササイズの用途以外に、リハビリテーションでも活用されるツールです。ストレッチ用のポールを使うと、肩甲骨まわりをほぐして胸を広げるストレッチがおこなえます。
1. 床に置いたポールの上で、頭と背中、お尻を乗せるように仰向けになります。足は肩幅程度に開き、体が安定するように両膝を立てます。
2. 腕を伸ばすのは体の横方向です。手の甲を床に滑らせながら、鳥が羽ばたきするように、両腕を大きくゆっくりと動かします。上下に10往復ほど繰り返します。
3. 今度は背中の下でポールを転がすように、上半身を左右に揺らします。背中をポールにしっかりと押し当てながら、ゆっくり10往復繰り返してください。
まとめ
僧帽筋は体の背面を支える大きな筋肉です。頭や首、肩を支える重要な筋肉ですが、酷使されやすい部位でもあります。過度な疲労や緊張によって肩こりや首コリにつながってしまいます。
現状では痛みがなくても、僧帽筋をいたわるために定期的なストレッチをしましょう。効果のある正しいストレッチをおこないたい場合は、スポーツジムに通ってストレッチ教室で学ぶのがおすすめです。
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