運動しない人がプロテインを飲んでもいいの? プロテインの効果と意味のある飲み方
近年ではプロテインを店頭で見かけることが多くなり、身近な補助食品の1つとなっています。しかし、プロテインは筋トレやダイエットに励む人だけが飲むものだという認識もまだまだ根強いです。今回は運動する人としない人の両方におけるプロテインを飲むメリットを紹介し、運動しない人がプロテインを飲むときの注意点や効果的にプロテインを摂る方法を解説します。
目次
Toggle運動する人もしない人もプロテインを飲むメリット
プロテインは激しいスポーツや筋トレをしている人が飲むイメージですが、運動をしていない人にも意味がある栄養補助食品です。ここでは、プロテインを飲む一般的なメリットについて紹介します。
タンパク質は生命の源
タンパク質は私たちの体を構成する基本的な物質であるとともに、生命維持に欠かせない栄養素です。具体的には、筋肉や臓器、髪の毛、爪、ホルモン、免疫物質などを作るための材料となります。タンパク質が十分に摂取できていない状態が続けば、筋肉量が落ちたり肌や髪の健康が失われたりしてしまうでしょう。さらには集中力や思考力の減退といった精神的な問題が起こる可能性もあります。
私たちの体の栄養組成をみれば、タンパク質の重要性は明らかです。体重60kgの成人男性の場合、平均的にはタンパク質16.4%、脂質15.3%、ミネラル5.7%、糖質1.0%以下、残りは水分で構成されています(※)。水分を除いた栄養組成のうち、実に40%以上がタンパク質なのです。
人体を構成しているタンパク質は約10万種類ともいわれ、それぞれ遺伝情報に基づきアミノ酸が立体的に結びついて形成されています。自然界には約100億種類ものタンパク質が存在することからも、地球上のあらゆる生命を支える基盤といっても過言ではありません。
※出典:厚生労働省 実践的指導実施者研修教材 (3)栄養指導
栄養を補助してくれる
プロテインはタンパク質摂取の有効な補助手段です。十分なタンパク質を摂取するのが難しいとき、プロテインを飲むことで手軽に補うことができます。
日々の食事から適切な量のタンパク質を摂取することが望ましいですが、現実はそう簡単ではありません。仕事や家事などで忙しいために食事を省いたり、手軽な食事で済ませてしまったりすることもあるでしょう。
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」のデータをもとに計算された1日あたりのタンパク質の推奨量は、18~64歳の男性で65g、65歳以上の男性で60g、18歳以上の女性で50gとなっています(※)。過度なダイエットや偏食をしている人の中には、タンパク質を十分に取れていない可能性があるのです。
また、高齢者になると食事量が減少したり簡単な献立で済ませたりする傾向があります。あるいは咀嚼力が落ちて肉類を避けるなどしてタンパク質不足になりがちです。その解決策としてもプロテインによる栄養補給は有効だといえます。加齢に伴って筋肉の量が減少していく「サルコペニア」や、介護が必要になりやすい状態である「フレイル」を予防するのに役立ちます。
※出典:公益財団法人長寿科学振興財団 三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量
コストパフォーマンスが良い
タンパク質は肉や魚に多く含まれますが、それらの食材をコンスタントに食べようとするとある程度食費がかさみます。固形の食材を基本としつつも、プロテインを併用することでコストパフォーマンスの良いタンパク質豊富な食事を実現することができます。
高タンパク質食材の代表格である卵と鶏胸肉で、タンパク質を摂取するコストを確認してみましょう。卵1個(全卵50g)に含まれるタンパク質は6.2gで、仮に卵1個が20円だとすると、タンパク質1gあたり約3.3円になります。鶏胸肉(生・皮なし)100gには23.3gものタンパク質が含まれていますが、近年は100gあたり75円前後まで値上がりしているため、タンパク質1gに換算すると約3.2円です。
商品にもよりますが、最安クラスのプロテインであればタンパク質1gあたり約3円で手に入れることができます。「最近タンパク質が足りていないかも」と思ったときに、低コストで手軽に栄養補給をしたいならプロテインが最適です。
運動しない人がプロテインを飲むときの注意点
プロテインは主にタンパク質を補給するための栄養補助食品です。とはいえ、プロテインだけで筋肉がついたり運動能力が高まったりすることはなく、飲みすぎればかえって問題が起こり得ます。以下、運動しない人がプロテインを飲む時の注意点について説明します。
筋肥大効果はない
タンパク質が筋肉の材料になるといっても、プロテインを摂取するだけで筋肉が増えるというわけではありません。筋肉が成長・増加することを「筋肥大」といいますが、筋肥大には適切なトレーニングが必要です。物理的ストレスと科学的ストレスを与えるレジスタンストレーニングを行わなければ、プロテインをいくら飲んでも筋肉の成長は起こらないのです。
筋肥大のメカニズムは、筋肉の破壊と修復が繰り返されることで成り立っています。トレーニングの負荷によって筋肉(筋線維)が分解された後、栄養と休息を十分に取ることで再び合成されます。再合成されるときに筋繊維が分解前よりも太くなるため筋肉が大きくなります。これが「超回復」です。
超回復を繰り返していかなければ筋肥大は実現できません。また、同じ重量や負荷でトレーニングを続けても頭打ちになるため、筋肥大を継続させるには少しずつ筋トレの強度を上げていくことが重要です。
カロリーオーバーに注意
「飲むだけでタンパク質を摂取できる」というプロテインの手軽さは、エネルギーの過剰摂取につながることがあります。糖質と脂質を過剰摂取すれば、体脂肪の増加につながるのはよく知られています。しかし、タンパク質も糖質と同等のカロリー(1gあたり4kcal)があるのを忘れてはいけません。利用しきれなかったタンパク質は、糖質や脂質と同様に体脂肪として体内に蓄積されてしまいます。
プロテインは通常の食事よりも短時間で大量のタンパク質が摂取できてしまうため、カロリーオーバーに注意してください。特に牛乳や豆乳、フルーツジュースなどでプロテインを溶かして飲んでいる人は、合計カロリーをきちんと計算しておきましょう。ダイエット目的で利用する場合には、プロテインの摂取カロリー分だけ糖質や脂質を減らすといった工夫も必要です。
タンパク質の過剰摂取による健康リスク
タンパク質は生命維持に必要な栄養素ですが、摂りすぎれば健康への悪影響も起こり得ます。レアケースではありますが、腎臓への負荷増加やカルシウムの過剰排出、消化器系へのダメージといったリスクにも留意しましょう。
タンパク質の過剰摂取により腎臓への負担を増大させてしまうと、一定量以上のタンパク質が排泄されてしまう「たんぱく尿」を引き起こすおそれがあります。これは腎臓の働きが低下して、血液からろ過したタンパク質を再吸収できずに排出してしまう症状です。
また、カルシウムが過剰に排出されると尿路結石や骨粗しょう症などのリスクが高まります。加齢や疾患によって消化器が弱っていると、プロテインの飲み過ぎが体に深刻な影響を与える可能性もあります。特に何らかの持病を持つ高齢の方がプロテインを飲む際は、事前に医師と相談することが望ましいです。
運動しない人が効果的にプロテインを取る方法
運動しない人がプロテインを取る場合、以下に挙げる方法がおすすめです。
1日のうち1食をプロテインに置き換える
忙しい生活を送っていて、朝食や昼食を食べる時間がない人も多いのではないでしょうか。あるいは、1日の食事回数を1回や2回に減らして減量しようと考える人がいるかもしれません。個人の体質や活動量にもよるため一概にはいえませんが、恒常的に食事回数を減らすのは栄養不足になってしまう可能性が高いです。タンパク質だけでなくビタミンやミネラルまで不足すると、健康上の問題が起こるのは避けられません。
本来はきちんとした食事で栄養を取るべきですが、難しい場合にはプロテインに置き換えるのも1つの方法です。ランチに糖質と脂質ばかりのファーストフードを食べるなら、思い切ってプロテインに切り替えたほうが健康的です。商品によってはビタミンやミネラルも同時に摂取でき、ゼリータイプや固形タイプなら満足感も得られます。ただし、1日トータルの栄養バランスを考慮しつつ、自身の体調と相談しながらプロテイン摂取の適切な量とタイミングを見つけることが重要です。
栄養バランスを改善する
1日3食摂っていても、適切な栄養バランスを保つのは簡単ではありません。朝食を食パンと目玉焼き、コーヒーなどで済ませ、昼食にはラーメンやパスタなどの麺類ばかりを食べるような毎日を送っているなら、タンパク質が不足しているのは間違いないでしょう。毎日の食事が糖質に偏りがちな人も、プロテインでタンパク質を補うだけで栄養バランスを大きく改善することができます。
また、最近は生活スタイルが多様化し、動物性の食品を避けたいという人も増えてきました。ヴィーガン向けの食事では肉・魚・卵・乳製品などを一切使わないため、特にタンパク質不足にならないよう注意しなければなりませんが、プロテインでの補助を前提にすると食事の用意が楽になります。ソイプロテインやピープロテイン、玄米プロテインなどは植物性タンパク質から作られているので安心です。
少食な人のカロリー補給に役立てる
食事量が少なくて体重がなかなか増えないことに悩んでいる人は、間食としてプロテインを取り入れてみましょう。サイズアップを図りたい人にとって、プロテインは効果的なカロリー補給源となります。ドリンクタイプなら摂取しやすく、1度で飲めないときには時間を空けて何回かに分ければ飲み切れるでしょう。スポーツをやっていて体格を大きくしたい子どもにもおすすめです。もちろん食事がメインで、プロテインはあくまで補助食品であることを忘れないでください。
あるいは、加齢のために固形物が食べづらくなった、食が細くなってしまったといった場合にも、タンパク質補給とカロリー摂取にプロテインが役立ちます。筋肉量とエネルギーを確保できるため、より活動的な生活を送ることにつながるでしょう。ただし、高齢で持病のある人がプロテインを取り入れる際は、医師などの栄養指導に従うことが大切です。
まとめ
プロテインの摂取は運動を行わない人にもメリットがあります。プロテインで不足分のタンパク質を補うことは日々の健康維持に役立つためです。しかし、ただプロテインを摂取するだけでは筋肥大にはつながりません。プロテインを取り入れて食生活の改善に成功できたら、次は運動にも取り組んでみてはどうでしょうか。
スポーツジムで有効なトレーニングを積むことで、単にダイエットをするだけでなくボディメイクまで実現できます。専門的な指導と適切な設備に興味がある人は、ぜひお近くの スポーツクラブNASの店舗 までお問い合わせください。
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